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インタビュー
ハルさん(非配偶者間人工授精で生まれた人の自助グループ)
   2005年に「非配偶者間人工授精(AID)で生まれた人の自助グループ」をつくりました。当事者同士、想いを話し合える場が必要だと思ったことがきっかけです。AIDについて知らない人が多い、問題を知る人が少ないと、人に話し辛いという状況があります。またこの技術には、子どもへの告知/子どもが提供者を知る権利など、解決されていない問題が多くあり、法的整備も進んでいません。

 私は23歳のときAIDで生まれたことを知りました。父親の遺伝性疾患を私が知ったことで、母から事実を告げられました。

 一番ショックだったのは血がつながっていないことではなく、そのことを親が一生言わずに済まそうと思っていたということです。また私がこのことに悩んでる状態を、受け止めてくれなかったことが悲しかったですね。

 人にこの問題を話すとき、まずAIDのことから説明しなくてはなりません。また悩みを話すと「過去の事に囚われないで」「そんなことは忘れてもっと楽しい事考えたら?」「時間が経てば忘れるよ」「あなたは愛されてるはず、今まで育ててもらった親に悪いと思わないのか」という人もいました。善意からの言葉なんでしょうが、このことに悩んでいる自分を否定されているようで、それ以上ものが言えなくなってしまいます。

  私はこの問題に取り組まないと先には進めない...それなのに人に話せないという孤独感。他の当事者はどうやって切り抜けているのかと探し、半年後ようやく会えたときは嬉しかったですね。自分が悩んでいることを初めて肯定され気持ちが楽になりました。

 この3年間に父親が亡くなり、就職して経済的に少し落ち着き、AIDの研究者やいろいろな人との出会いがあって、聞いたり話したり。段々自分の気持ちが整理できてきました。事実を知ったことはよかったと、今では思っています。

 しかし私自身、AIDがいいとは思っていません。「自分を否定するのか」と言われるけれど、そうではない。生殖技術をめぐる今の議論は“技術は進める/精子・卵子・胚の提供OK/そのためにどう法整備するか”という方向。私は、むしろ立ち止まってみることが必要だと思います。そして今実際に起こっている問題に、きちんと解決の方向を示して欲しい。それがないままに、技術だけが先行して行われている今の状況には疑問があります。人には子どものいない人生を送ることや養子を育てるという選択肢もある。
“いろんな家族のあり方を認める中で、AIDで家族をつくることを選ぶ”というならわかるけど、現状では“AIDはするけど、それは隠してフツーっぽくなりたい”という意識が多いようです。だから子どもには伝えない。この技術の一番の当事者は子どもです。何が子どもにとって最も良いことなのか、もう一度考えて欲しいと思います。                     
 日本におけるAIDの状況を変えたい。子どもには事実を伝え、そのうえで親子の関係を築いて欲しい、そして子どもが知りたいと思ったときには、提供者を知ることのできる環境を整えて欲しい。最後にAIDで生まれた人たちには、自分が悩んでいることを否定する必要はないということを伝えたいと思います。

【参考】
  • 「AID(非配偶者間人工授精)」
     男性側に不妊の原因がある場合に行われる。匿名の第三者の精子を使い、女性に人工授精する方法。日本では50年以上の歴史があり、1万人以上の人が生まれていると言われているが正確な数は不明。現在も年間約150人前後の子どもがこの技術によって生まれている。親が子どもにその事実を告げることはほとんどなく、また子どもに提供者の情報は与えられない。

  • 「精子・卵子・胚の提供者による生殖補助医療制度の整備に関する報告書」
     2003年4月、非配偶者間の生殖医療について検討を重ねてきた厚生労働省 生殖補助医療部会から出された最終報告書。ここでは、第三者からの精子・卵子・胚の提供を認めること(ただし近親者からの提供は今後の検討とする)、また子どもの福祉の観点から、これら技術によって生まれた子どもが15歳になり希望をすれば、提供者の情報(個人が特定できる範囲まで)を知ることができるとした。ただし、代理出産は禁止している。厚生労働省はこの報告書をもとに、法律案を国会に提出するとしていたが、2006年10月現在、その見通しはいまだたっていないようだ。
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